というわけで、私が身近で聞いた怪異譚を御紹介しよう(注)。
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70歳台半ばのヨシエさんから聞いた話。
今から70年程前。戦争が激しくなる少し前の、九州のある田舎町でのお話だ。
当時幼い子供達の間に、「疫痢(えきり)」という感染症が流行っていた。赤痢菌が原因と言われている。現在の「大腸菌O157」との関連も考えられている。しかし、戦後しばらくたった1960年代以降、なぜかほとんど消えてしまったので、確かなことはわからない。
疫痢は、発症すると恐ろしく致死率が高く、しかも経過が急なのが特徴だった。昨日は元気だった子が朝に具合が悪くなり始め、高熱を発して意識を失い、その日の夜にはもう亡くなっている、という程だった。
………
ヨシエさんはこの「疫痢」にかかってしまった。
母親は重い病気で入院中。父親は仕事で不在。小学生の姉が、おんぶして町の病院まで運んでくれた。
高熱に見舞われたヨシエさんは、病室のベッドで生死の境をさまよった。
深夜。ふと目がさめた。
暗い病室の中、ベッドの足元のあたりに人影があるのに気付いた。白い服を着た、長い髪の女の人だった。
看護婦さん?
いや違う。着ているのは白い洋服ではなく、白い着物だった。無表情だった。
目が合った。そして、ゆっくりと枕元に近寄ってきた。
枕元に来た女の人は、しばらくそこに無言のまま立ち、じっとヨシエさんの顔を見つめていた。若い、綺麗な女の人だった。なぜか恐怖は感じなかった。
やがて、女の人はゆっくりと右腕を上げ、ヨシエさんの胸の上あたりで、握った右手を開いた。
その右手から、白く光る玉が落ちてくるのが見えた。
記憶があるのはそこまでだった。ヨシエさんは再び眠りに落ちた。
………
翌朝。目が覚めると、ヨシエさんの症状は峠を越えていた。高熱は下がっていた。
元気を取り戻したヨシエさんは、あの白い着物の女の人のことを思った。はっきりとしないが、あの顔には見覚えがある気がしていたのだった。
多分、少し前に病気で亡くなった、年上のいとこのレイコさんだ。。。
………
その後、成長して二十歳近くになったヨシエさんは、レイコさんとそっくりだったという。
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以上は、私が聞いたお話を脚色して記した「フィクション」です。人名はすべて仮名です。
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(注) 『納涼☆理系霊異記 (其の一) 序』 http://higashiooi-machio.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-c5da.html