ポスドクに限らず、アカデミックな研究職のポストに応募する時には必ず、2通程度の「推薦状」を提出しなければならなくなる。
誰に推薦状を書いてもらうかというと、お世話になった(なっている)指導教員、恩師など、日頃懇意にしていて自分の研究内容をある程度理解しているような知り合いの研究者に頼むのだ。
現在の指導教員、あるいは近い過去に指導教員だった人に推薦状を頼んで断られることはまずない。断られるとすれば、余程嫌われてしまった場合だろう。いずれにせよ、いつでも推薦状を書いてくれるような関係の格上の研究者を、少なくとも2、3名は持っておくように注意しなければならない。
研究者としての礼儀上、余程の合理的理由がない限り、頼まれた推薦状は書くものだ。頼まれる立場の人もまた、そうやって誰かのお世話になってきたのだ。だから、推薦状を依頼する時に遠慮する必要はない。ただし、研究者はすべて「忙しい」ので、十分な時間の余裕を持って、できるだけ早目に頼むべきだ。
依頼する時には、応募しようとしているポストの概要(どういう研究室のどういう身分か)を伝えなければならない。また、いくら懇意にしている先生であっても、自分の略歴、業績目録、応募に際してアピールしたいこと、くらいはあらためて文書なりメールなりで伝えておくべきだ。
推薦状の内容を、推薦される本人が見ることはできない(少なくとも原則としては)。封筒に入れて封をされた状態で渡される。しかし、内容には定型的なパターン(構成と内容)がある。次のようなものだ:
- まず、推薦される人(応募者)と自分(推薦者)との関係(いつどのように知り合って、どのような関係にあるのか)を記す。要するに、自分が推薦状を書くに足る立場にあることを示すわけだ。
- 応募者のこれまでの研究業績、研究歴の概要を簡潔に記す。これによって、応募者の研究内容を理解している(自分が推薦者として適格である)ことをさらに示すとともに、応募者が優れた実績を挙げていることをアピールしてあげる。
- 応募者の人となりを記す。研究内容自体だけでなく、研究室の運営に積極的に関わったとか、後輩の面倒をよく見たとか、要するに、この人を採用すれば採用する側にプラスになると思われることをアピールしてあげる。
- 稀に、応募者のマイナス面も記す。これを書くことはまずない。しかし、2や3であまりにも応募者を褒めちぎり過ぎて、推薦状自体の信憑性が疑われるほどになった場合は、バランスをとって客観性・公平性をアピールする意味で、今後改善が期待される点を若干記すことはあり得る(「研究熱心のあまり○○」、とか)。しかしあくまで、採用にマイナスにならない範囲でだ。
- 以上から、応募者がこのポストにふさわしいということを結論付け、心から推薦する旨の言葉で結ぶ。
この構成と内容は、不文律と言っていいくらいに決まっている。あとは、応募者から渡された応募者固有の情報をこのパターンの中に当てはめれば、推薦状が完成するわけだ。推薦状は、A4用紙1枚にまとめるのが通常だ。
要するに、仮に「イマイチな奴だな」と思っていても、応募者のマイナスになるようなことは書かない。それが理系研究者の礼儀なのだ。
つまり、推薦状の内容自体は、さほど意味がないとも言える。応募者が、しっかりした地位にある研究者の何人かと、推薦状を書いてもらえるような良好な関係にあるとアピールすることに意味があるのだ。
アカデミックな研究者の道を進む限り、最終的な終身雇用のポスト(教授とか主任研究員とか)に辿り着くまでは、推薦状を書いてもらう身分を脱することはない。
アカデミックな研究職で生きていくには、人間関係が意外なほど重要なのであった。。